母さんのいす
今回は『母さんのいす』という本を紹介します。
原作は『A Chair for My Mother』で、著者はVera B. Williamsです。
この本は1983年コルデコット賞 銀メダルを受賞した作品で、100万冊以上は販売される名作になっています。
日本語訳は『100万回生きたねこ』でも有名な佐野洋子です。
この本は、目的をもってお金を貯めることの大切さについて学ぶことができます。
主人公のローザが、母と祖母と協力して、少しずつお金をためて、家族のために大きないすを買うというお話です。
「待つこと」の大切さ 皆さんの中には、マシュマロテストについて聞いたことがある方も多いと思います。 マシュマロテストは類似のテストが様々な地域で行われていますが、スタンフォード大学の研究者が1970年に行ったものが有名です。 […]
投資でも、喜びを先延ばしにして「待つこと」、つまり、将来より大きな成果のために、自分の感情をコントロールして、目先の欲求を我慢すること(delayed gratification)の大切さが言われています。
この本では、家族の幸せのために、協力して少しずつお金を貯めることの大切さを伝えてくれます。
また、それだけでなく、3人家族のたくましさや、家族の絆も感じられる本です。
絵も独特な魅力があって、美しいです。
あらすじ
話は主人公ローザの「私」の語りで進められます。ローザは、母親と祖母の3人暮らしです。
私の母さんは、現在、ブルータイル食堂でウェイトレスとして働いています。
ときどき、私も食堂の仕事を手伝って、もらったお金の半分は瓶に入れて貯めておきます。お母さんも、稼いだチップを瓶にいれます。
なぜこういうことをしているかというと、ふわふわで、素敵な椅子を買いたいからです。
実は、3人は火事ですべてを失っていました。
火事の後、いろいろな人がたくさんのものをくれて、助けてくれました。
おばあちゃんは「私たちは若くてラッキーだった。またやり直せるから」と言って、3人は生活を立て直します。
ただ、うちにはソファーや大きい椅子がありません。
お母さんが疲れて帰ってきた後に、ゆっくりする場所がありません。おばあちゃんが料理で疲れた時も、休む場所がありません。
なので、お母さんは、自分の働いている食堂で見つけた瓶をおいて、お金を貯めはじめたのです。
そして、努力が実って、ついに念願のいすを買える日が来ます。
瓶の中の小銭を銀行にもっていって、お札に変えてもらい、それはそれは素敵な椅子を買います。
今、おばあちゃんは昼間に、この椅子に座って近所の人とお話します。お母さんは、仕事の後、椅子に座ってテレビでニュースをみています。
私も、お母さんと一緒に座ります。お母さんの膝の上で寝てしまったときは、お母さんがライトを消してくれます。
最後に一言
最後に、大きな椅子の上にお母さんと一緒に座り、幸せそうな表情で眠るローザをみて、こちらも幸せな気持ちになります。
大変な境遇にあるとは思うのですが、3人家族が前向きでたくましく、勇気ももらえる本です。