「待つこと」の大切さ
皆さんの中には、マシュマロテストについて聞いたことがある方も多いと思います。
マシュマロテストは類似のテストが様々な地域で行われていますが、スタンフォード大学の研究者が1970年に行ったものが有名です。
この実験では、4歳の幼児にマシュマロをあげ、「もし食べないでとっておけば、後でもう一つあげる」と言って、研究者は部屋を後にします。子どもによってはすぐ食べてしまう子も、ちゃんと我慢して2つ目のマシュマロをもらった子もいました。
18年後に、子どもたちを追跡調査をした結果、マシュマロを食べなかったグループの子どもたちは、周囲からより優秀と評価されていることがわかりました。さらに、大学進学適性試験(SAT)の結果は、食べなかったグループのほうが平均210ポイントも高くなっていたそうです。
これでテストしていたのは、「Delayed gratification」という、将来のために、自分の衝動・願望をコントロールして、目先の欲求を我慢する力です。「自制心」・「セルフコントロール」にも関係します。
この「将来の報酬のために、我慢する力を養う力」は、投資家にももちろん大切です!
自分の欲求のままにお金を使ってしまっていたら、貯まるものも貯まらなくなってしまいます。
無駄遣いをせず、自制心をもって日々の消費行動をすることは大切です。
この「待つこと」については、アメリカ等の幼少期向けの金融教育で頻繁に取り入れられています。
やり方
「待つこと」を学ぶやり方は色々提案されているようですが、一案としては次のようなものがあります。
1. まずは小さいことから始めてみる!
まずは、小さな目標を立てることからはじめてみます。
5分待ってくれたら、「キャンディーを1つじゃなくて、2つあげるよ」みたいなものでも大丈夫です。
YouTubeが好きな子なら、「30分待ってくれたら、動画を1つじゃなくて、2つ見せるよ」などでもOKです。
子どもの興味に合わせて、小さな目標を立てます。
2. タイマーを使う
小さな目標を問題なく達成できたらいいですが、もし難しい場合は、いろいろなストラテジーを使ってみましょう。
すストラテジーの一つは、タイマーを使うことです。短い時間、待つタスクであれば、この方法は有効です。
タイマーを使うことで、どのぐらい待ったら報酬がもらえるのか、子どもは可視化できます。
時間の概念も理解できるようになります。
3. 想像力を使う
想像力を使うのもストラテジーの一つです。
一つの方法は、子どもに将来の報酬についての想像力を働かせるように仕向けることです。
「今YouTubeを見たら、一つしか見られないよ。動画を2つ見られたら、楽しいね。」や「キャンディが2つあったら、2倍楽しめるね」などポジティブなイメージを伝えて、待つことの大切さを理解してもらいます。
また、現在の誘惑についても想像力を働かせるよう仕向けることもできます。
キャンディーなど、目の前にほしいものがある場合、それを衝動で食べてしまわないように、「心の中で、これは本物じゃなくて、ただの絵だと思ってみたら?」とか「心の中で、このキャンディーはすごく辛いんだと思ってみたら?」などと言ってみるといいです。
ポジティブな方向にも、ネガティブな方向にも想像力を働かせることで、自制心や衝動を抑える力を養いやすくなります。
4. 気を散らす
待っている間に、違うことをして気を散らさせるのもいいです。
一緒に何かの遊んでもいいですし、絵本を読んでいてもいいですし、何かのお話をしてもいいですし、とにかく他のことに注意を向けさせることも有効です。
5. 他の人ならどうするかを考えさせる
また、他の人ならどうするか考えさせることもストラテジーの一つです。
子どもがあこがれているヒーローや、好きな保育園の先生の名前をあげて、「〇〇先生ならどうすると思う?」と聞いてみます。
そうすることで、自分の欲求について、他の人の立場から客観的に考えさせるよう促すことができます。
6. うまく待てたら、ポジティブな言葉を!
もしうまく待てたら、「よく待てたね」「パパもうれしいよ!」と、ポジティブな言葉をかけてあげましょう。
待つことが悪いことでないことを知ってもらうことは大切です。
待つことを学ぶ場面はたくさん
ちなみに、日常生活で「待つこと」を学べる場面はたくさんあります。
子どもは物をほしがるものですが、普段の生活から、なんでも買ってあげないことは大切ですね。
例えば、お店などで「おやつが欲しい」など、子どもがダダをこねたときも、「待つ力」を養うチャンスです。
そのときも、ただ「ダメ!」というだけじゃなくて、上記に紹介したストラテジーを使うこともできます。
例えば、「今日このおやつを買わなかったら、前からほしいっていってた〇〇のおもちゃにお金を回せるよ」など言って、将来の報酬を想像するように伝えることもできます。
違う話をしたり、ここぞとばかり(いつもは見せないような)面白い動画を見せたりして、気を散らすのも有効かもしれません。
そして、うまく我慢できたら、ポジティブな言葉をかけてあげましょう!
最後に一言
「待つこと」を学ぶ活動について紹介しました。
日常の生活から、待つことを学んでもらえるように工夫したいですね。
そして、子どもと一緒に、親自身も「待つこと」を学ぶことになりそうです!